2005年12月10日土曜日

So Forth 5


So Forth 5


何度よんでもJack Derridaはいい。この引用は、Disseminationであるが、今手元にGrammatologyを引き寄せて読んでみようと頁をめくっているが、どうやっても本質的なことを論じる言葉ばかりである。曰く、

Socrates, he who does not write ------ Nietzsche

いまぼくたち私達は、文字を書く事を疑わず、その上で傲慢にも何かを書いている。書く事が傲慢なのではなく、書く事で傲慢になり得る。他方、文字の無い社会があって、そこでは、書かないと決心した、というよりも、書く事の意志のないひとたちの社会があって(ああ、時間横断的にだ、Brodskyよ!)、それは伝承、継承、承継ということを、毎日の時間の最も大切なことのひとつとしているのだ。そこから、規範が生まれ、道徳が生まれ、従って法も生まれる。しかしなお、文字で書かれていないのだ。いや、見えない文字で書かれているのだ。概念そのものが灼熱の文字そのものであるような社会よ。この社会にも傲慢な人間はいるだろうと誰かが反論することだろう。然り。しかし、そのような社会では、その人間の傲慢さが、ひとを傷つけることはないのだ。傷つける。この本質的なことを余りにも軽薄に、軽率に、価値を認めようとしない文字社会の有象無象よ。Script. 魂のscriptを。

その魂から迸(ほとばし)り出る、今日もなお執拗に、この段落、この言葉を:

The khairein takes place in the name of truth: that is, in the name of knowledge of truth and, more precisely, of truth in the knowledge of the self. This is what Socrates explains (230a). But this imperative of self-knowledge is not first felt or dictated by any transparent immediacy of self-presence. It is not perceived. Only interpreted, read, deciphered. (Dissemination > Pharmakon by Jack Derrida)

さあて、自己を知るために、主語である支配者の秘密を知るために、今日も言葉の聖杯探究の旅に出よう。

今日は、Joseph Brodskyの詩集SO FORTHからSo Forthの第4連を。これはベルリンの壁の崩壊した1989年の作品だ。やはり、どう考えても、政治の壁は、儚いものだとぼくは思う。すべて、このような無駄なことは、お金のためになされたことなのだということが、今よくわかる。そのようなもの達に災いあれ。本当に災いあれ。ぼくは神話の中へと旅する。ぼくは神話の中へと旅するというこの文は、本当の災いからそのような種類の人間達を救うためではない。さあ、今日もあなたと、あんたと、君と、お前と一緒に垂直の旅に出よう。

Six Years LaterやOn LoveやA Songのように、少しづつ、1連づつ解釈して、今日の解釈と翻訳を、こうして明日の種としたい。

瞠目すべきJoseph Brodskyを。


【原文】

Thatユs what speedユs all about. The belle was right. What would
an ancient Roman, had he risen now, recognize? A wood-
pile, the blue yonder, a cloudユs texture,
flat water, something in architecture.
but no one by face. Thatユs how some folk still do
Travel abroad at times, but, not entitled to
afterlife, scurry back home hiding their eyes in terror.
And not yet settled after the farewell tremor


【訳】
そのポイントの総体は、速度がすべてなのであるが、速度とは一体こうしたものなのだ。そのいい女のいうことが正解だったのさ。
古代ローマ人が今墓から立ち上がったら、一体何を認識するだろうか。
丸太、視野におさまり、見える限りの青い景色、雲の織物、2次元の水、建築物の内部にあるなにものか。しかし、見知った顔は、知己はだれもいない。当時生きていたときにだって、実はそうだったのだ。
それだから、ある民族はいまだに、何度も何度も外国に旅を重ねても
いまだに死後の世界に行く権利がなく、死を恐れる目つきを隠しながら
いきいきと きびきびと故郷にかえってくるのだ。
And、且つ、天変地異の後の別れのトレモロが終わっても
まだ、それは終わっていない、決着をみていないのだ。


【解釈】
1. 最初の出だしのThatユsのThatは、勿論前の第3連の最初のThat goes for autumn; that goes for time per seを受けている。というよりは、同じthatという品詞をつかって、前の連の全体を受けている。しかし、一言では、the pointといった第2連のこの言葉を指しているのであり、a belleが第1連で思わず溜め息した、大人としての能力のことをいっているのだ。

こうして思えば、この第1連の メ, and youユll cock up your double-barrelモも性的な含意があるとぼくは思う。ずっと控えめであるが。

2.そうであれば、この連で、

Thatユs what speedユs all about. The belle was right.

が生きるのだ。

そのポイントの総体は、速度がすべてなのであるが、速度とは一体こうしたものなのだ。そのいい女のいうことが正解だったのさ。ここにもBrodskyの嗜好がある。なぜなら、speedとは、a transmission gear in automotive vehicles or bicycles -- usually used in combinationだから。

また、語源をみると:

Etymology: Middle English spede, from Old English spEd; akin to Old High German spuot prosperity, speed, Old English spOwan to succeed, Latin spes hope, Lithuanian speti to be in time

とあり、speedは、繁栄、成功、希望、(間に合って、おくれずに、拍子正しく)という意味だ。つまり、最後の( )にまとめた意味では、第3連の第3行

freed of their wheelsユ malfunction

ということなのだ。

また、speedは、velocityと類義であることから、連続量だ。つまり、だれかがmetrics、測定基準をあてがって、その量と質を知る事ができるようなそのようなものだ。世界は変化する。どのように?次のように。そうして世界を狙う一点は変化しない。どのように?次のように。

3.古代ローマ人が今墓から立ち上がったら、一体何を認識するだろうか。
丸太、視野におさまり、見える限りの青い景色、雲の織物、2次元の水、建築物の内部にあるなにものか。しかし、見知った顔は、知己はだれもいない。当時生きていたときにだって、実はそうだったのだ。

これがBrodskyのいっていることだとぼくは思う。

4.Thaユs how some folk still doノ..
それだから、ある民族はいまだに、何度も何度も外国に旅を重ねても
いまだに死後の世界に行く権利がなく、死を恐れる目つきを隠しながら
いきいきと きびきびと故郷にかえってくるのだ。
And、且つ、天変地異の後の別れのトレモロが終わっても
まだ、それは終わっていない、決着をみていないのだ。


【語釈】

16. speed
Main Entry: 1speed
Pronunciation: 'spEd
Function: noun
Etymology: Middle English spede, from Old English spEd; akin to Old High German spuot prosperity, speed, Old English spOwan to succeed, Latin spes hope, Lithuanian speti to be in time
1 archaic : prosperity in an undertaking : SUCCESS
2 a : the act or state of moving swiftly : SWIFTNESS b : rate of motion: as (1) : VELOCITY 1, 3a (2) : the magnitude of a velocity irrespective of direction c : IMPETUS
3 : swiftness or rate of performance or action
4 a : the sensitivity of a photographic film, plate, or paper expressed numerically b : the light-gathering power of a lens or optical system c : the time during which a camera shutter is open
5 : a transmission gear in automotive vehicles or bicycles -- usually used in combination (a ten-speed bicycle)
6 : someone or something that appeals to one's taste
7 : METHAMPHETAMINE; also : a related stimulant drug and especially an amphetamine
synonym see HASTE

17.  pile
Main Entry: 1pile
Pronunciation: 'pI(&)l
Function: noun
Etymology: Middle English, dart, stake, from Old English pIl, from Latin pilum javelin
1 : a long slender column usually of timber, steel, or reinforced concrete driven into the ground to carry a vertical load
2 : a wedge-shaped heraldic charge usually placed vertically with the broad end up
3 a : a target-shooting arrowhead without cutting edges b [Latin pilum] : an ancient Roman foot soldier's heavy javelin

18. yonder
Main Entry: 1yon疆er
Pronunciation: 'y穫-d&r
Function: adverb
Etymology: Middle English, from yond + -er (as in hither)
: at or in that indicated more or less distant place usually within sight

19.  afterlife
Main Entry: af疸er疝ife
Pronunciation: 'af-t&r-"lIf
Function: noun
1 : an existence after death
2 : a later period in one's life

20. scurry
Main Entry: scur疵y
Pronunciation: 'sk&r-E, 'sk&-rE
Function: intransitive verb
Inflected Form(s): scur疵ied; scur疵y疂ng
Etymology: short for hurry-scurry, reduplication of hurry
1 : to move in or as if in a brisk pace : SCAMPER
2 : to move around in an agitated, confused, or fluttering manner

20.1 scamper
Main Entry: 1scam疳er
Pronunciation: 'skam-p&r
Function: intransitive verb
Inflected Form(s): scam疳ered; scam疳er疂ng  /-p(&-)ri[ng]/
Etymology: probably from obsolete Dutch schampen to flee, from Middle French escamper, from Italian scampare, from (assumed) Vulgar Latin excampare to decamp, from Latin ex- + campus field
: to run nimbly and usually playfully about

21. tremor
Main Entry: trem痂r
Pronunciation: 'tre-m&r
Function: noun
Etymology: Middle English tremour terror, from Middle French, from Latin tremor trembling, from tremere
1 : a trembling or shaking usually from physical weakness, emotional stress, or disease
2 : a quivering or vibratory motion; especially : a discrete small movement following or preceding a major seismic event
3 a : a feeling of uncertainty or insecurity b : a cause of such a feeling


2005年12月4日日曜日

So Forth 4



何度よんでもJack Derridaはいい。この引用は、Disseminationであるが、今手元にGrammatologyを引き寄せて読んでみようと頁をめくっているが、どうやっても本質的なことを論じる言葉ばかりである。曰く、

Socrates, he who does not write ------ Nietzsche

しかしなお執拗に、この段落を:

The khairein takes place in the name of truth: that is, in the name of knowledge of truth and, more precisely, of truth in the knowledge of the self. This is what Socrates explains (230a). But this imperative of self-knowledge is not first felt or dictated by any transparent immediacy of self-presence. It is not perceived. Only interpreted, read, deciphered. (Dissemination > Pharmakon by Jack Derrida)

さあて、自己を知るために、主語である支配者の秘密を知るために、今日も言葉の聖杯探究の旅に出よう。

さて、今日も、Joseph Brodskyの詩集SO FORTHからSo Forthの第2連を。これはベルリンの壁の崩壊した1989年の作品。やはり、どう考えても、政治の壁は、儚いものだとぼくは思う。すべて、このような無駄なことは、お金のためになされたことなのだということが、今よくわかる。そのようなもの達に災いあれ。本当に災いあれ。さあ、今日も一緒に垂直の旅に出よう。

Six Years LaterやOn LoveやA Songのように、少しづつ、1連づつ解釈してみよう。今日の解釈と翻訳を、こうして明日の種としたい。

本当の勝利者の名前だけを列挙した歴史書をぼくは書いてみたいものだと思う。
実は、世にある歴史書の主人公は、皆敗者なのではないか?素晴らしき、瞠目すべきJoseph Brodskyを。


【原文】

That goes for autumn; that goes for time per se,
like when you quit smoking, or else when the trees you see
ape fanning-out tracks at last freed of their wheelsユ malfunction
and the edge of the forest echoes a rustling junction.
And itユs not a lump but a hedgehog that fills your throat,
for you canユt enjoy any longer the silhouette
of a steamship at sea, and an airplaneユs callous
profile looks odd on high, having lost its halos.


【訳】
その総体が、秋という方向に向かい、その意味をなしながら、なす、なして動く、終わらないままに。なぜならば、その総体は、時間自体、時間の本質に向かい、その意味をなしながら、なす、なして動く、終わらないままに、であるからだ。それは丁度お前が煙草をやめるときみたいに、または、おまえが目にする木々が、季節の輪廻の環に合わせて回転するのを誤つことから自由になって、つまりは季節変動に影響されることなく、ついには、風に舞って落ちその軌道をそのまま複製するとき、そうして、森の縁(へり)が、かさこそと接続する山びこ、echoを反響させて返して来る、そのようなときみたいに、それの総体は、時間の本質へと向かい、指し示すのだ。
AND、且つ、お前の喉を一杯にするのは、何かの塊ではなくて、何かの毛虫ごときものなのだ、というのも、お前は、もはや、海をゆく蒸気船の影絵、横顔をみても、こころ楽しむことがなく、また飛行機の外皮の厚い横顔をみて、その主要な仕様がどれ位高く飛べるにせよ、高く飛んでその影絵のコロナを失って、何か感動のないものとなって見える。


【解釈】
1. Thatとは何か
そうして、第3連で、この関係の総体を、Brodskyは、Thatと呼ぶのだ。

That (The point, Not, And, But)

という関係を。

そうして、That goes for autumn; that goes for time per seと。

さあ、続けよう。その総体が、秋という方向に向かい、その意味をなしながら、なす、なして動く、終わらないままに。なぜならば、その総体は、時間自体、時間の本質に向かい、その意味をなしながら、なす、なして動く、終わらないままに、であるからだ。

これが第3連の第1行の意味だ。

2. その文は、一体どのようなpointを指し示しているというのだろうか。
それは、お前が喫煙を止めたときのように。実は、quit smokingであって、stop smokingなのではない。だから、喫煙、煙草を吸うという行為は、だれかがどこかで、あるいはそこここで継続しているのだけれども、わたしはそこ行為を去った、quitした、精算したのだという意味である。

3. または、おまえが目にする木々が、季節の輪廻の環に合わせて回転するのを誤つことから自由になって、ついには、風に舞って落ちその軌道をそのま複製するとき、そうして、森の縁(へり)が、かさこそと接続する山びこ、echoを反響させて返して来る、そのようなときみたいに、それの総体は、時間の本質へと向かい、指し示すのだ。

Trackは、trainやrailの縁語である。詩人はどこまでも執拗であり、執着心を失わない。この素晴らしい言語能力にぼくは驚嘆する。如何に隠しても、謙虚であっても、地下水脈は涸れることはない。豚は木に登らない。

4.an airplaneユs callous
profile looks odd on high, having lost its halos.
これは、訳のように訳したが、まだ確信がない。もう少し時間を必要とする。訳が完全に誤りだとは思わない。付言すれば、airplaneが高くあがるという意味と、looking odd on highで、その感情のたかぶりがないというのと、oddということからマイナスプラスの奇数で、2によって割る事ができない数字という意味からの奇妙な感じが一緒に掛け合わされているのかと思う。それから関数において、計算結果としてマイナスとプラスであろうと互いにその絶対値が不変であるような関係とその関係の打ち出す値。それが、森の縁辺で生まれるエコー,山びこ、反響だといっているのだ。これが、the point、なぜならば、それはjucntionであり、何かが終わり、何かが始まるその点であるからだ。それが、既にして予測されているポイント、現実を産み出すポイントだ。季節は繰り返し、森の中で狩りをして、鳥を撃とうと狙いすまして、撃ってはいけないので、いや撃ち過ぎてはいけないのだ、酸素を肺一杯に吸い込む事の方が大切なのだ。何故ならばノノ。こうして、この連も第1連に戻る。最後の連と同様に。


【語釈】
11-1 ape
11-2 fan
11-3  track
11-4  junction
11-5 rustle
12. hedgehog
12-1 callous
12-1.1 callus
13. profile
14. odd
15. halo
15-1 odd




2005年12月3日土曜日

So Forth 3


So Forth 3

The khairein takes place in the name of truth: that is, in the name of knowledge of truth and, more precisely, of truth in the knowledge of the self. This is what Socrates explains (230a). But this imperative of self-knowledge is not first felt or dictated by any transparent immediacy of self-presence. It is not perceived. Only interpreted, read, deciphered. (Dissemination > Pharmakon by Jack Derrida)

自己を知るために、主語である支配者の秘密を知るために、今日も言葉の聖杯探究の旅に出よう。

さて、今日も、Joseph Brodskyの詩集SO FORTHからSo Forthの第2連を。これはベルリンの壁の崩壊した1989年の作品です。やはり、どう考えても、政治の壁は、儚いものだとぼくは思う。すべて、このような無駄なことは、お金のためになされたことなのだということが、今よくわかる。そのようなもの達に災いあれ。さあ、今日もあなたと一緒に垂直の旅に出よう。

Six Years LaterやOn LoveやA Songのように、少しづつ、1連づつ解釈してみよう。今日の解釈と翻訳を、こうして明日の種としたい。


【原文】

The point, of course, is not autumn. And not oneユs own features, which
alter like those of an animal approaching the one whoユll catch
it. But this feeling of a puny paintbrush left idle
by the painting that lacks a frame, a beginning, an end, a middle.
Not to mention a gallery, not to mention a nail.
And a train in the distance runs whistling along the rail,
though you will spot no smoke inspecting its inventory.
But in a landscapeユs view, motion is mandatory.


【訳】
狙うその点は、勿論、秋なのではない。それから、その動物を捕らえようとしているそのひとに近付いて来るその動物自身の特徴や姿は季節に合わせて、秋なら秋の色に変化するわけだが、ひとも動物と同じとはいえ、そのように変化するひとの特徴や姿が、その点なのではない。そうではなくて、この点は、後で生まれた絵筆の感覚なのであり、絵筆の運びによって何もしないままの放っておかれた、何か根拠と言うものが欠落した、後で生まれた絵筆の感覚、しかも、この絵筆は、枠や開始や終了や中間点を欠いているのだという感覚なのだ。

画廊、ギャラリーのことをいっているのではなく、爪のことをいっているのではない。つまりは、どのような種類の絵筆のことをいっているのではないのだ。
AND、且つ、遠いところを走る汽車が、軌道に沿って走りながら汽笛を鳴らす。お前が、汽車の石炭の残量を検査するための煙りを発煙してもいないのに。
BUT、しかし、景色を眺めようとすると、その景色の中では、動きというもの、動きの連鎖は、誰が命ずるのかは知らないが、どうしたって存在せずにはいられないものなのだ。


【解釈】
1. この連で、いよいよ詩人は、この点とは何かという問いに答える。これは感覚でもあり、そうだとすると、絵画に例えていえば、しかも鑑賞者としてではなく、射手として狙撃者として、すなわち絵描きとして見れば、枠も最初の筆を措く点も、最後に筆を払う点も、またその中間状態での絵筆点もない、最終的に全体のバランス、on the whole、総体としての中に存在する点、それが、a puny paintbrush、後で産まれる絵筆の一刷毛(はけ)または、そのひと刷毛を備えた一本の絵筆の感覚なのだ。

2. 何故punyという形容詞かといえば、これは、後で現れる以外にはないから。時間の中での因果関係の連鎖では、いつもそのように本質は現れる。だから、生きている間には、既にして(a priori)という以外にはない、そのような点があるのだ。それは季節に応じて変化する保護色の外観や特徴とは無縁である。

3. わたしは、画廊、ギャラリーのことをいっているのではなく、爪のことをいっているのではない。つまりは、どのような種類の絵筆のことをいっているのではないのだ。

4. ANDの前に否定辞(NOT)を持って来るか、これが第2連、そうしてANDの後に否定辞(NOT)をもってくるのが、これが第3連。

  Summer, The point, Not, And, But, That, Travel

これらの7つの元素が、この詩の命だということは昨日書いた通り。The pointは、夏が終わり、その点でもなく、秋が来る、その開始点でもない。それではそのポイント、狙撃手の絵筆のネールアートのポイントではない、そのThatのポイントは何かという問いに対して、Brodskyは、(Not, And, But)で答えるのだ。

(1) Travel (Not, And, But)
(2) And (Travel, Not, But)
(3) But (Travel, Not, And)
(4) Not (Travel, And, But)

ぼくは否定論理積というこの世の論理ではないといって来て伝えたかった論理は、上記(4)である。このNotによって産まれる世界を詩というのだとBrodskyはいっているのだとぼくは思う。いや、ぼくもそうおもうのだ。詩は無限に無数に産まれる。

この(1)は、第4連の世界。(2)と(3)は、第2連、第3連、第4連の世界。第5連は、また第1連に繋がって戻るのだ。Hart Craneならば、To Brooklyn Bridgeで、condense eternityと呼んだあらゆる価値の大転倒の大循環のポイントである。そういえば、昨日思い出したことであるが、ドイツ語で詩を創作することをdas Dichtenというのだった。英語で、condenseまたはthe condensingであろう。

5. But in the landscapeユs view, motion is mandatory.
このmotionには、trainということから、loco-motion, locomotive motionという意味が掛けられている。日本語の訳にはすぐには出てこない。Trainとmotionということから、日本語では連鎖と訳した。

6. Thatとは何か
そうして、次の第3連で、この関係の総体を、Brodskyは、Thatと呼ぶのだ。

That (The point, Not, And, But)

という関係を。

そうして、That goes for autumn; that goes for time per seと。

7. And a train in the distance runs whistling along the rail,
though you will spot no smoke inspecting its inventory.

この従属文の意味は、多分蒸気機関車の時代の鉄道会社内外の約束ごと、取り決めだったのだと思う。国鉄時代の規則書をみれば、多分このように書いてある筈。機関士助手または釜炊き係は、何時間に1回又は何回に1回、石炭の残量、在庫を確認して、汽笛を何回鳴らし又は煙りを何回発煙して、石炭を補充するために、その在庫量を最寄りの駅または指定された駅に事前に知らせなければならない。


【語釈】
今日この連でひいた言葉は次の通りです。いつもの通り、Webster Onlineに当たって下さい。ぼくは、これ以外にどのような資料も見ていない。もともと持っていない。貧しさこそぼくの命だから。

9.-1 feature
9-2 puny
9-3 idle
9-4 spot
9-4-1 spot (noun)
10. motion
11. mandatory


2005年12月2日金曜日

So Forth 2


So Forth 2

The khairein takes place in the name of truth: that is, in the name of knowledge of truth and, more precisely, of truth in the knowledge of the self. This is what Socrates explains (230a). But this imperative of self-knowledge is not first felt or dictated by any transparent immediacy of self-presence. It is not perceived. Only interpreted, read, deciphered. (Dissemination > Pharmakon by Jack Derrida)

自己を知るために、主語である支配者の秘密を知るために、今日も言葉の聖杯探究の旅に出よう。

さて、今日も、Joseph Brodskyの詩集SO FORTHから。So Forthの第1連を。これはベルリンの壁の崩壊した1989年の作品です。やはり、どう考えても、政治の壁は、儚いものだとぼくは思う。すべて、このような無駄なことは、お金のためになされたことなのだということが、今よくわかる。そのようなもの達に災いあれ。さあ、今日も一緒に垂直の旅に出る事にしよう。

またSix Years LaterやA Songのように、少しづつ、1連づつ解釈してみよう。
今日の解釈と翻訳を、こうして明日の種としたい。

【原文】

So Forth
Joseph Brodsky

Summer will end. September will come. Once more itユs okay to shoot
duck, woodcock, partridge, quail. メYouユve grown long in the tooth,モ
a belle may sigh, and youユll cock up your double-barrel,
but to inhale more oxygen rather than to imperil
grouse. And the keen lung will twitch at a sudden whiff
of apricots. On the whole, the world changes so fast, as if
indeed at a certain point it began to mainline
some muck obtained from a swarthy alien.


【訳】
夏が終わる。秋が来る。もう一度、鴨、山鷸(やましぎ)、山鶉(やまうづら)、鶉(うずら)を撃っても良いのだ。「お前も、長く、世間と自然の波風に打たれて立派になったもんだねえ」と、ある粋な女がいうかも知れないが、そしてこう来る、連発式散弾銃の撃鉄を上げ、狙いを定めるんだよ、でも、鳥を撃って絶滅するまでやろうと思っちゃいけないのよ、それよりも、もっと酸素を胸一杯に吸い込みなさい。すると、鋭敏なる肺は、アプリコットの撓(たわ)わな実がその芳香を突然発すると、ドキッとする。恰も、本当に、ある点において、暗い色をしたよそ者から分捕った、地味豊かな土地の土を注射器で第1静脈に注射し始めるかのごとくに、総体として、世界は速く変化しているのだ。


【解釈】
1.詩とはこのように作るものか。というよりも、詩とはこのような所で誕生するのかと、第1連を読んで思う。どの連も互いに関係し、どの連のどの言葉も他の連の言葉と関係する。その関係を生むのは、言いたいことであり、形象です。形象というよりは、やはり概念、活き活きとした概念だ。これ以外にいいようがない。概念は血であり、血脈であり、血流、生きていることの証だとつくづく思う。

2.詩の産まれるポイントを、Brodskyはandと呼んでいる。この詩の大文字で始まる言葉を洗い出すと次のようになる。

Summer, The point, Not, And, But, That, Travel

この7つの言葉だ。これはとても深い意味があると僕は思う。Brodskyの詩は、多分、すべてこの7つの言葉からなっている筈だ。これだけでももう相当な世界だ。この7文字がBrodskyの詩の世界のelements、諸元素である。

訳もまづこのように訳してみて、追々修正をしよう。Brodskyのある詩にあったように、Brodskyの考えでは、キャビアをものにしたら、鮫は不要、わざわざ釣る必要はないからである。本質こそ先。本質とは何かという問いは別にして。しかし、本質とは何かという問いの答えをわたしは知っている。それは、この問い、何々とは何かという問いに既にある。本質は関係にあるのだ。そうであれば、この詩も、関係についての詩、そのthe pointが何かと何かの関係にあるという詩だ。このthe pointは、ぼくならば、臍(へそ)と呼ぶがなあ。

3.鳥の種類の名前は正直いって、その細かな違いがわからない。しかし、辞書をひいいてわかるのは、これらの鳥はgame birdだということ、狩猟のための鳥だということである。

4.確かに、その通りだ。鳥を撃とうとして、鳥に狙いを定めて鉄砲を撃っても、鳥には決して当たらない。時差があるから、鳥(対象)は移動するから。そうして、狙撃者と対象との間には距離があるからだ。だから、射手は時間差と対象の動きの先を予測をして、撃鉄を起こさなければならない。奇妙な話だが、対象のないあるpointを狙って撃つ事になる。これは、ぼくたちが普通の生活の中で経験していることだけれども。

5.やはり、題名に触れないわけにはいかない。SO FORTHとは、ANDをその前に隠した、ANDと言う論理積の演算の結果生まれた様々な物事のことである。On LoveというSA Part of Speechという詩集の中の一篇をぼくは訳したが、その連載のOn Love 5の解釈で使った論理の名前でいえば、否定論理積というべきものである。しかし、このようなうつろいゆくものは論理ではないし、実際にこのような論理計算の名前はない。その一瞬を否定すること、というのではまだいい足りず、その一瞬という変化点を幾つも抽象化して濃縮してthe pointを見つけて命名すること。それが、この詩人の詩である。他の詩人達もぼくは同じだと思う。

6.この連に出てきたa belleは、第4連にもthe belleとして出て来る。第1連のこのbelleの言葉が、別にの言い方で言われる。もっと直裁に。そこでこの第1連の比喩はもっと生きることになる。The belle was right. 世界が変化するときの速度、speedというものは、こういったものなのだと、第1連のa belleはいいたかったのだと第4連でいわれている。第1連と第4連の間にふたつの連があって、それぞれ、このthe point、対象が動き、照準を合わせるそのポイントが何かが歌われている。だから、第2連の第1行に、詩人は、The point, of course, is not autumnと書くのであり、第3連の第1行に、詩人は、That goes for autumn; that goes for time per seと書くのだ。つまり、The point is not autumn, that goes for time per seなのだ。このforの感じがおわかりだろうか。Thatということばは、動いている対象とそれを狙っている射手の視線とこのふたつの全体を指す。この全体は動いているのだろうか、とまっているのだろうか。


【語釈】
0. duck
Main Entry: 1duck
Pronunciation: 'd&k
Function: noun
Inflected Form(s): plural ducks
Usage: often attributive
Etymology: Middle English duk, doke, from Old English duce
1 or plural duck a : any of various swimming birds (family Anatidae, the duck family) in which the neck and legs are short, the body more or less depressed, the bill often broad and flat, and the sexes almost always different from each other in plumage b : the flesh of any of these birds used as food
2 : a female duck -- compare DRAKE
3 chiefly British : DARLING -- often used in plural but sing. in constr.
4 : PERSON, CREATURE

0.1 woodcock
0.2 partridge
0.3 quail

1. belle
1-1 double-barrel
2. cock

2.2 noun
3. grouse
4-1 keen
4-2 whiff
4-3 twitch
5. apricot
6. mainline
6-1. muck
7. swarthy
8. alien
9. puny
10. motion
11. mandatory
12. hedgehog
13. profile
14. odd
15. halo
16. speed
17.  pile
18. yonder
19.  afterlife
20. scurry
20.1 scamper
21. tremor
22. hanky
23. flit
23.1 erratice
24. decreptiude
24.1 decrepit
25. loom
26. tan
26.1 tan
27. haze
28. defy
29. speckle
29.1 speckle
29.2 speck



2005年11月30日水曜日

SO FORTH by Joseph Brodsky


The khairein takes place in the name of truth: that is, in the name of knowledge of truth and, more precisely, of truth in the knowledge of the self. This is what Socrates explains (230a). But this imperative of self-knowledge is not first felt or dictated by any transparent immediacy of self-presence. It is not perceived. Only interpreted, read, deciphered. (Dissemination > Pharmakon by Jack Derrida)

自己を知るために、主語である支配者の秘密を知るために、今日も言葉の聖杯探究の旅に出よう。

さて、今日も、Joseph Brodskyの詩集SO FORTHから。So Forthを。これはベルリンの壁の崩壊した1989年の作品です。やはり、どう考えても、政治の壁は、儚いものだとぼくは思う。すべて、このような無駄なことは、銭金のためになされたことなのだということが、今よくわかる。そのようなもの達に災いあれ。さあ、今日も垂直の旅に出る事にしよう。

またSix Years LaterやA Songのように、少しづつ、1連づつ解釈してみよう。


移動書斎にてここ数日この詩篇を眺めているが、様々なことが解った。このようなことがあるのだろうかとぼくは思う。


今日は、原文をみな載せます。そうして明日の種としたい。


【原文】


So Forth

Joseph Brodsky

Summer will end. September will come. Once more itユs okay to shoot
duck, woodcock, partridge, quail. メYouユve grown long in the tooth,モ
a belle may sigh, and youユll cock up your double-barrel,
but to inhale more oxygen rather than to imperil
grouse. And the keen lung will twitch at a sudden whiff
of apricots. On the whole, the world changes so fast, as if
indeed at a certain point it began to mainline
some muck obtained from a swarthy alien.

The point, of course, is not autumn. And not oneユs own features, which
alter like those of an animal approaching the one whoユll catch
it. But this feeling of a puny paintbrush left idle
by the painting that lacks a frame, a beginning, an end, a middle.
Not to mention a gallery, not to mention a nail.
And a train in the distance runs whistling along the rail,
though you will spot no smoke inspecting its inventory.
But in a landscapeユs view, motion is mandatory.

That goes for autumn; that goes for time per se,
like when you quit smoking, or else when the trees you see
ape fanning-out tracks at last freed of their wheelsユ malfunction
and the edge of the forest echoes a rustling junction.
And itユs not a lump but a hedgehog that fills your throat,
for you canユt enjoy any longer the silhouette
of a steamship at sea, and an airplaneユs callous
profile looks odd on high, having lost its halos.

Thatユs what speedユs all about. The belle was right. What would
an ancient Roman, had he risen now, recognize? A wood-
pile, the blue yonder, a cloudユs texture,
flat water, something in architecture.
but no one by face. Thatユs how some folk still do
Travel abroad at times, but, not entitled to
afterlife, scurry back home hiding their eyes in terror.
And not yet settled after the farewell tremor

a hanky still flits in the air. The others who had the luck
of loving something much more than life, knowing all along
that decrepitude is, after all, that after-
life, loom marble-white in the sun getting no tan and often,
partial in their way to historyユs pleasures, gaze
fixedly at some point in the distance. And the greater the latterユs haze,
the more here are points like this defying oneユs aim and cartridge,
the more speckled turn the eggs of quail, woodcock, grouse, partridge.

1989